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再生、Arabic Symbolizm:アラブ世界研究所

ジャン・ヌーベル+アーキテクチュア・スタジオ、1988年、パリ

Arab World Institute,Jean Nouvel+Architecture Studio

南側外観。後ろがセーヌ川。

おなじみのダイヤフラムのカーテンウォール。動かないのが玉に瑕だが、それが最高の贅沢??

入口。建物に向かって斜めにアプローチする。

 アラブ世界研究所へは出来てからすぐの10年ほど前に一度訪れたことがある。しかし、その時はたまたま休館日と重なってしまって外側からしか見ることが出来なかった。今回は時間もたっぷりあり、半日かけてこの建物を見た。

 この建物はご存じのようにジャン・ヌーベルが建築界にその存在を知らしめた建物である。今回改めてこの建物を見ると、彼のエッセンスの多くは既にこの建物に現れていることに気づく。透過しかつ反射する皮膜。黒光りする床、壁、天井。メタリックな素材の使用。極端に天井を低くした意外性のある空間、等々。彼の空間の特徴である「心地よい違和感」が既にここには現れている。ただ、わかりやすいファサードの表現や空間をかなりタイトに構成している点などは、その後の彼の建物とはやや異なる感じがする。これは、おそらく協同したアーキテクチュア・スタジオの意向が入っていることにもよるのだと思う。

 例のカメラの絞りのようなダイヤフラムのカーテンウォールは素材やシステムこそ新しいが、モスクなどでよく使われるアラビア紋様そのもので極めてわかりやすい表現である。光の量に応じて自動的に絞りが調節されるハイテクメカニズムだが、よく故障し、必ずしもうまく作動しないそうである。一品生産が原則の建築の世界でこのようなシステムを導入するのは実はなかなか難しい。工業製品なら耐久テストなどを十分積んだあとで製品化することが可能だが、建築ではそうはいかないからだ。しかし、メタリックに黒く仕上げた天井や床に透過した光が万華鏡のように乱反射する光景は、それでも十分に美しかった。

 また、特筆すべきは天井の低さである。基準となっている天井高はなんと2100mmを切っており驚異的に低い。ただ、これにはもちろんからくりがある。ほとんどの階ではこの基準モジュールを2層使いしているのである。しかし、肝心の一階部分だけは一層使いとなっていて2100mm弱の天井高を押し通している。床や天井を黒くメタリックに光らせているのと、外の広場を白くし、なおかつ天井と床の2枚の板の間に梁などの突起物がいっさいなく、2枚の板に挟まれた空間がそのまま外に続いていることではじめてこの空間は成り立っている。素晴らしく緊張感のある空間だ。

 この空間に立ったとき、ガツンとやられた感じがした。常識を疑うなら徹底的に疑い尽くさなくてはならない。そして全てを組み立て直すこと。真に創造的なものはそれができて初めて生まれ得る。ところが、大抵はそこまではできない。どこかで中途半端に既存の常識を入れて変にバランスを取ってしまうからだ。別に天井高が2100mmでは低すぎるなどという理論はない。作る側が勝手にそう思いこんでいるだけであって、条件が揃えばそういうことも可能だということを彼はこの建物で実証した。公共的な建築でここまでのことをやり得た彼はやはりただ者ではない。

 内部の空間も実に変化に富んでいて、面白い。また、光の扱いが実に巧みで斬新である。museumの部分にもプラスチック素材で作られた格子状のスクリーンがあって、そこも透過光が美しかった。

 しかも、これだけ斬新な建物でありながら、建物の配置は実に素直にパリの街並のスケールや文脈に合わせてあり、こけおどし的なことを全くしてないことも評価すべきことだと思う。とにかく、言葉や写真では伝えきれない多くのものがたくさん詰まっている建物である。

一階の部分は2枚の板に挟まれた緊張感漂う空間。

光が乱反射するエレベーターシャフト。

2棟の隙間の軸線はノートルダムへと向いている。

奥は光る壁になっている。かなりシュール。

基準フロアは2層使いでゆったりとしている。

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