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◆試合の印象

 今回の大会はTV、生を合わせて全試合の半分くらいを見たが、自分としては、イタリア対フランス、フランスvsクロアチア、ブラジルvsデンマークといった試合が印象に残った。しかし、それでも歴代のワールドカップの名勝負には及ばず、内容的にはやや物足りない大会だったと思う。決勝はつまらなかったという人が多かったけど、少なくとも決勝戦としては前2回の大会よりは楽しめたのではないか。決勝は内容は二の次、勝負が絶対なのだからそれは仕方がない。ワールドカップの楽しみ方はいろいろあるけれど、面白い試合を見たければ決勝トーナメント1回戦から準決勝ぐらいを注目するのが一番良いと思う。

 

◆大会全体の印象

 運営的にはチケット問題を除いてフランス大会は大成功だったと思う。日本やアメリカ的な発想だと、とかく試合以外の演出で盛り上げようとするが、とにかく、試合そのものを盛り上げようとする態度に徹していることに好感がもてた。

○見やすく臨場感抜群のスタジアム

 日本のスタジアムでは、オーロラビジョンのような設備があるのは今や常識だが、ここでは、フランススタジアムをのぞいてそのようなはでな設備はいっさいなかった。そればかりかスタジアムに時計すらついていないのには驚いた。今何分経過したとか、ロスタイムに入ったかどうかなどは全て自分の時計で確認するしかないのである。いくらなんでも時計ぐらいつけてもいいんじゃないかと思ったが、こと生の試合を観戦するという立場に立つと、非常に良いスタジアムばかりだった。全てがサッカー専用競技場として設計されており、グラウンドと観客席が非常に近く、見やすくて、臨場感も抜群なのである。一部の競技場はデザイン的にもみるべきものがあった。

○試合の中継に徹するテレビ

 TVも、日本のような付加的な解説番組はほとんどなかった。何しろ、ただ試合を流すだけ。せいぜいやったとしても、ゴール特集ぐらいである。TVを見ても何組が何位とか勝ち点がどうなっているすら全然わからないのには閉口した。いくら見ていても順位表など出てこない。試合の中継の後に言葉ではしゃべっているようだが、なにしろフランス語なのでわからない。現地にいるのに、順位を確かめるためには新聞を買うか、自分自身で試合の結果をチェックして計算するしかないのである。でも、現地で会った日本人に聞くと皆そんな感じだった。今順位はどうなってますかなどと情報を交換し合っていた。とにかく、付加的な情報が溢れまくる日本とはだいぶ感覚が違う。

○思ったよりも安かったチケット相場

 また、これだけの大会になると、猫も杓子も乗り遅れまいとするのが日本人だが、フランスでは皆がマイペース。おかげで、思ったよりも試合のチケットを手に入れるのは簡単だった。人気カードはさすがに高いが、旅行会社で数万円といわれたチケットが、ほとんどの試合で現実には原価かせいぜい額面の3倍程度で取り引きされていた。

 面白いのは、国によって試合に対する金銭感覚が大きく異なること。一番太っ腹なのは、日本人とアメリカ人。オランダ、イングランド、ブラジル、アルゼンチンも案外金払いはいい。南米からW杯を見に来れるような人は相当、金持ちということか。ドイツは堅実。意外だったのは、イタリア、フランス、スペインといったサッカーの本場ともいえる南欧の人たちの財布の紐が堅いこと。普段からいい試合に接していて目が肥えているせいだろうか。

○ホテルは個人経営のところに限る

 一部に便乗値上げもあったようだが、僕の泊まったホテルはどこも個人経営の小さなところだったので、料金も通常とあまり変わらず、概ねサービスも良かった。TGVは試合の前日や当日でも問題なく予約できたし、駅員はたいてい英語ができるのでほとんど問題はなかった。フランス人は不愛想だとかサービスが悪いとかいわれるがどこもそんなことはなかった。確かにマイペースなところもあるにはあるがそれはその国の文化なのだからしかたがないと思う。

○おおらかな警官

 街でさわいでいてもお祭りだから少々のことは大目に見る警官。試合の後にシャンゼリゼの交通を遮断して騒いでいても横でただ見てるだけ。ダフ行為もトラブルが起きなければ見て見ぬ振りの大人の対応。自己責任社会の一端を見る思いがした。

○金をかけずに大会を盛り上げる工夫

 前夜祭とか、今や恒例になっている3大テノールのコンサート等もあったが、どちらかというとこれだけの規模の大会の割には大がかりなイベントは少なかったと思う。そのかわり、街にはワールドカップ気分を盛り上げる飾り付けがなされ、商店もそれぞれの工夫で飾り付けをしていた。主要な場所には英語のできるボランティアの人がスタジアムへの行き方などを親切に教えてくれることも好感が持てた。金や設備ではなく、大事なのは心である。そういう意味でやはりサッカーが文化として根付いている国での大会だという印象を持った。

○チケット問題

 唯一いただけなかったのは、例のチケット問題。販売方法に問題があったのは確かだが、旅行代理店にも問題がある。口約束だけでチケットの予約を入れていたなんて論外だ。現地でも、旅行会社に予約をきちんと入れていたのにもかかわらず、チケットが手に入らなかった日本人がたくさんいた。

 

◆2002年大会に向けて

 振り返って日韓共催となる2002年大会は果たしてフランス大会を超える(近づく?)ことができるんだろうかと大いに疑問を持った。

 日本のことだから、大会の組織的な運営自体は全く問題がないだろうし、スタジアムや交通機関、TV等の設備面でも問題はないと思う。しかし、本当に心から楽しめる大会にできるかどうかはそれとは全く別問題だ。

 スタジアムは収容人数や設備の面こそ充実しているが、ほとんどが陸上との兼用であるため、グラウンドからスタンドまでが非常に遠く、試合そのものが見にくいという欠点がある。自分は富山の陸上競技場の設計に携わっているので、これは実感として感じられることだ。フランス大会のように全て専用は無理としてもなんとかならないかと思うが、全てのスタジアムは既に建設着手されているのでもはや手遅れである。おまけに新設されるスタジアムはどこもスペック重視で、フランスのようにデザイン的に誇れるスタジアムがないのも寂しいかぎりである。

 運営面では、杓子定規な運営がお祭り気分に水をさすのではないかという心配がある。例えば、ダフ行為の取り締まりについても、競技場周辺だけを取り締まっても全く意味がないと思う。どうせ、闇で取り引きされることは目に見えているからだ。やるならチケットを正規の価格以上で売る行為を全て取り締まらなくては意味がない。チケットを再配分する手段がそれしかなければ、法律を改正するか、黙認するかそのどちらかしかないのではないか。

 大げさにいえば、2002年大会は日本や韓国が国際社会の一員として世界の人や文化を快く受け入れられる大人の国かどうかが試される大会だ。

 4年後はロナウド、デル=ピエロ等のスター達がまさに脂の乗りきった年齢になるし、日本も中田、小野の成長が期待できるので、非常に楽しみなんだけど、是非、試合そのものを盛り上げていく大会にしてもらいたい。

 

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