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透明or半透明?:カルチェ財団ビル

ジャン・ヌーベル、1994年、パリ

Foundation Cartier,Jean Nouvel

ガラススクリーン越しに前庭を見る。

ラスパイユ通りに面するファサード。周囲の街並に合わせた透明な壁面。

8mの高さを持つギャラリーの入口。前後ともガラスなので通りから奥の庭までが全て見通せる。

 パリ南部の高級住宅街ラスパイユ通りに面してこの建物は建っている。同じパリにあるので、どうしてもアラブ世界研究所との比較を試みたくなる。素材感や工業製品を使ったハイテクな表現は共通性があるが、透過と反射の違い、柔らかな光と強い光、おおらかな空間と緊張感のある空間の違いというものが両者の間にはある。

 カルチェ財団ビルのファサードは建物から自立したガラススクリーンである。通りから見ると、ガラススクリーン、前庭、本体の建物、奥の庭と幾重にも重なりつつ見通せる空間が特徴である。ファサードのガラス、建物の前側と庭側のガラスの計3枚のガラスが緑や人影を微妙に反射するので、虚と実が入り交じった実に不思議な光景が展開する。ガラス面に人影を模したシールが貼られているのもご愛嬌だが面白い。

 ある本の解説に世界一の透明建築というキャプションがあったがその表現はやや適切さを欠くと思う。確かに、自立のガラススクリーンがあることで、建物がいきなり道路に面しているよりは、街路側からの透明性は増していることは確かである。しかし、ガラスは透明であって透明でない。ジャン・ヌーベルという人はガラス=透明というような固定的な解釈を嫌う人である。だからむしろガラスの反射と透過が相半ばする微妙な性質を最も生かした空間を作りたいがために3枚の壁にしたのだという説明の方がぴったりくる。

 アラブの光が入射と反射が合わさった強い光であるのに対し、こちらは拡散する柔らかな光である。アラブの空間が緊張感ただようインパクトの強い空間であるのに対し、こちらは空気のように流れるおおらかな空間である。どちらがいいのいうのではなく、どちらも建物の性質や場所の性格に見合った解答だと思う。セーヌの河岸と住宅街の違い。アラブ世界の中心を現すシンボリックな表現と企業メセナの本部としての控えめな表現の違い。そういうことまで意識されているのがさすがだと思う。

あまり手入れをいれないラフな作りの庭が、かっちりとした透明なガラスと奇妙なマッチングを見せる。違和感のある心地よさ。

パリジェンヌが横切る絵になる風景

前庭の緑とファサードのガラスを支えるトラス。ロールスクリーンは巻き上げられた状態。

奥の庭側に露出するシースルーのエレベーター。白く見えるのは、外側に取り付けられたロールスクリーン。

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