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左の既存部分に正面のリビング部分を増築。庭に対して雁行配置となり庭との一体感が強まった。

 

フルオープンの建具を開けると一体となるリビングと庭。梁、天井はヒノキ。床は道産ナラ。

photo by shunsuke hirose

 

テラス側から見たところ。デッキ材は栗。

photo by shunsuke hirose

リビングからキッチン

敷地には多くのケヤキの巨木が残されている

 

アプローチ側全景。右奥の既存部分に中央の切妻部分を増築。クリ材の門扉は開戸+引戸で構成。

 

直線性を強調した玄関アプローチ。床は錆御影石

玄関の奥は地窓によって視線の抜けを作っている

 

上から光を取り入れた玄関ホール。壁はワラ入りのエコシックイ

 

ユーティリティーより洗面。左はバスローブ収納

1Fトイレ。リモコンと紙巻器はカウンター埋込

 

坪庭に面した洗面。坪庭は元浴室だった場所を“減築”して生み出した。鏡はメディシンキャビネット

 

囲われた庭に面しプライバシーが守られる浴室

2Fトイレ。手洗いは洗面にも使える大きめのもの

 

ユーティリティーの洗濯流しは引込収納戸で隠すことができる

中央だけをオープンにした対面式のキッチン

 

リフォーム前の建物。手前にリビングを増築し、2階バルコニーを延長。離れ(右)との間を玄関とした。

 

空間の性質を新しくするリフォーム

 Mさんのお宅は、高さ20m以上のケヤキの大木が立ち並び、武蔵野の面影を色濃く残す素晴らしい敷地です。3世代、6人がお住まいになる家は、母屋と離れの2棟に分かれていましたが、いずれも築30年以上を経過し、老朽化が目立つ状態でした。また家族が増えるに伴い、その都度増築を繰り返していったため、大きくなることでかえって使い勝手が悪くなっている部分もありました。

 お宅を訪れてまず感じたのは、南入り玄関でリビングダイニングが北側に追いやられているため、規模の割には日常的なスペースが手狭で、せっかくの庭がいかされていないことでした。建て替えるとなるとそれなりに金額が張るし、もともとの家に愛着があったため、リフォームという選択となりました。南側にリビングを増築という考えは最初のご希望の中に既にありましたが、私がやるべきことは、掛け違えたボタンを整理し、「あたかも最初からそのプランであったかのごとく」自然なプランを作ることでした。

ケヤキの巨木が残されている旧街道側の入口

 リフォームというのは、原状回復の修繕的なものから、大幅にイメージチェンジを図るものまで、いろんなレベルがあると思います。今回は中途半端にやっても大きな改善は望めないし、やるならそれなりに効果があがるものにして下さいというご希望だったので、単なる蘇生術ではなく、工夫によってマイナスを一気にプラスに変え、新しいイメージを生み出すことを考えました。その場合の「新しいイメージ」というのは、造形や表面的なお化粧を新しくするということではなく、「空間の性質を新しくする」ということです。造形要素としては既存部分にならいリシン吹付の壁に瓦屋根としていますが、それは敷地や既存部分の建物も含めた全体の環境としてのクオリティーを上げるための選択です。新しい部分だけが突出して逆に古い部分の価値を損ねてしまうようでは意味がありません。逆に、そうすることで、似たような造形要素でも構成を変えるだけで空間の性質は全く違うものになるという証明にもなったのではないかと思います。

◆空間の考え方

○部屋を並べただけの空間から流動的なつながりのある空間へ

 既存の家は工務店の設計施工によるものなので、基本的に「部屋を並べた」空間でしたが、それを「流動的なつながりのある空間」に変え、全体を回遊的な動線とすることで、今ひとつ使い切れていなかった空間を生きたスペースに変えました。

○閉じた空間から庭を生かした開放的な空間へ

 次に考えたのは、せっかくの庭が生かされていないことから、内部から外部へ向かって開かれた空間とすることでした。もともとが農家だったため、敷地や建物の配置は境界が明確でない農家的なつくりでしたが、その中で家だけが昔の農家のような開放的な造りから現代的な閉じた作りに変わっていったため、庭との一体感に乏しく、かといってプライバシーも守れない中途半端な状態になっていました。
 そこで、敷地レベルでは外部に対して門扉や塀などのガードをしっかりとした上で、家自体は内部から外部に向かって開いてゆく作りに変えました。農家的なつくりをお屋敷的な作りに変えたと言い換えても構いません。単に窓を通して「見る」ものでしかなかった庭とのつながりも、空間的にも利用上も一体感を高め、暗くなりがちな北側の部分に3つの坪庭を取り、死にかけていたスペースを蘇らせました。

○玄関、リビング、水回りはすっきりとした非日常的な空間へ

 リニューアルする玄関、リビング、水回りは、要素を単純化し、大胆な開口、大胆の光の入れ方で、すっきりとした非日常的な空間としています。
 玄関は直線的な視線の抜けをつくると同時に、高窓や地窓で高低も演出しています。リビングは、全開放の引込戸とし、庭との一体感強調。構造体もあらわしとしました。洗面・浴室廻りは、減築により坪庭スペースを生み出し、光や景色を大胆に取り入れる構成としました。洗面の手前にバスローブや着替えの収納、掃除スペースなどの機能的な部分を設けていますが、そういうスペースがあることで逆にすっきりした空間が可能になります。

◆その他の技術的な特徴

○収納の見直し

 既存住宅は、収納もあちらこちらに分散し使いにくい状態でしたので、「モノは使う場所に収納する」という基本に立ち返り、収納計画の全面的な見直しを行いました。

○プロパンガスからオール電化住宅へ

 都市ガスに比べ割高なプロパンガスの供給エリアのため、母屋の部分はガスからオール電化に切り替えました。レンジはIHヒーター、給湯はエコキュートを採用し、床暖房はエコキュートの床暖房を入れました。

○耐震補強による耐震性の向上

 既存住宅は古い基準で造られているため、筋交いが少なく基礎も脆弱なものでした。したがって、増築部分だけでなく、改修部分もいったん床を全部はがしてベタ基礎を打設し、柱・梁・筋交いなどを大幅に補強しました。図面がなかったため、現れた軸組が当初予想と違っていて、仕上を全部はがした段階で再度補強方法の見直しをしました。

○自然素材の使用

 材料は質感や健康面に優れた自然素材としています。既存の住宅がヒノキであったため、構造体はヒノキを使用しました。床材は道産ナラ、壁はワラ入りのエコ漆喰、天井はヒノキおよび能登ヒバ。外部のデッキ材、門扉、ルーバーなどは耐久性に優れるクリ材。洗面・浴室は、壁は大理石モザイク貼り、床はクォーツサイトを使用しています。

◆図面はこちら

◆工事中の様子(朝日工務店のHP)

場所

埼玉県ふじみ野市

構造/階数

木造在来工法/2階建

敷地面積

約1631m2 (494坪)

用途地域

第一種住居地域

増改築面積

約136m2(41坪)(うち増築面積 約37m2(11坪)

延床面積

約376m2  (114坪)

設備

電気(エコキュート)、給排水、空調、床暖房、TV、電話、インターホン

設計・監理

植本計画デザイン         植本俊介・中川幸子

構造設計

SIGLO建築構造事務所     山口吉紀

設備設計

ZO設計室            柿沼整三・清水真紀

施工

朝日工務店            内田昌人

竣工 2006年3月

掲載

GOODリフォーム2009年9月号 リクルート

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