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リビング、キッチン、坪庭のつながり

浴室から坪庭を見る。玉石とルーバーの対比

“スペース”から坪庭を挟んでLDKを見る

玄関から奥のテラスへと視線が抜けてゆく

ぬっと突き出しユニークな表情を見せるファサード

正面とは対照的に大きさを感じる側面の表情

離れつつつながる家

 KN HOUSEと同様に、木造の門型架構がRC造の上に乗っかるという特殊な工法を採用し、坪庭を挟んでスキップフロアとなっている建物です。

 敷地は間口約5.4m、奥行き約17mの細長い土地。坂道となっている前面道路から約1mほど上がっており、奥側がやや広くなっている不整形の土地です。クライアントは30代のご夫婦と3才の娘さんの3人家族。お父様との同居も視野に入れ、お子さんが増えることも考え、土地を立体的に利用し、内部は間仕切りを少なくしてできるだけ広く使いたい、KN-HOUSEと同じように木の構造がダイナミックに現れた空間が欲しい、という要望がまず出されました。

 家というのは複数の人間がひとつ屋根の下に集う場所。でも、もちろん皆が同じ場所で同じ時間を過ごすわけではありません。むしろ、別々の場所で別々の時間を過ごしていることの方が実際には多いのだと思います。

 互いの距離感をどのように設定するかは様々で、ひとつの空間としてくくってしまう方が良い場合もあれば、別々の空間とする方が良い場合もあります。距離感の設定というのは、住み手の状況や敷地条件などによって、その都度変えるものですが、打合せを重ねて行くにつれ、今回の場合は「離れているけどつながっている」そんな感覚をよりクリアに実現したいと考えました。

 スキップフロアによって段々状に上がっていく感覚と長手方向に引き延ばされた感覚。坪庭が常に中心にあり、実際にはたどり着けない場所がむしろ中心となっている。家の中にいろんな場所がありつつも、意識としてはつながっている。RC造+木造としたのは、それが解決法として一番合理的であると判断したからですが、根底には分離と結合のイメージを構造的にもより明確に表現したいという思いがありました。

階段から坪庭を見る

寝室から坪庭を見る。RCの腰壁部分はキャンティレバーを支えるための逆梁となっている

浴室と一体化した洗面スペース

間接光が仕込まれたメディシンキャビネット

両面から使えるように工夫されたキッチン

空間に“機能”ではなく“性格”を割り当てる

 家というのは、本来多様な側面を持つものです。プログラム重視の現代の住宅は、本来家が持つべき多様な豊かさをバッサリと切り落とし、短絡的な意図が単に拡大しただけの存在でしかありません。恣意的で造形的な空間は使いにくいだけだし、逆にのっぺりとしたフラットな空間を「自由に使ってください」と言われても、住まい方に対する想像力すら萎えてしまうでしょう。

 この家は明快な構造を貫きつつも、多様な生活の側面を現代の生活、家族のあり方に照らして再構築しようとしたものです。人に対して空間を割り振るのではなく、機能に対して空間を割り振るのでもなく、スペースの性格づけというのを重視し、住み手が空間の性質に応じて、使い方を自由に発想していけるようにという思いを込めています。別に“寝室”が書斎になっても良いし、“個室”が寝室になっても良いのです。“土間”や“スペース”を誰がどのように使うかは未だ未知数ですが、大切なのはどこにいても居心地が良いということです。

◆構造・・・RC+木造門型ラーメン構造

 地下1階および1階部分は鉄筋コンクリート(RC)造。中2階、2階、中3階は木造としています。

 木造部分は、短手方向は木造の門型の柱梁で支えており、長手方向は柱の外側の羽目板で支えています。桁はなく、筋交などもいっさい用いていません。木造では仕口部分への力の集中が弱点となるので、均一な面として全体的に力を分散させています。方向によって構造方式を変えることで空間的な方向性も明快になりました。

 壁の羽目板は構造であると同時に内装仕上も兼ねています。単に柱の外側に羽目板を打ち付けているだけなので、施工が簡単でしかも内側からは釘がいっさい見えないという利点もあります。羽目板の外側は外断熱の2重壁となっています。

◆設備・・・開放的な空間を成立させるための床暖房

 空間がつながっていて吹抜が多いので、暖房は温水床暖房をベースとし、エアコンを補助的に使用しています。LDKの温水床暖房は無垢材にも使える銅管を使った低温タイプのものを採用しました。洗面・浴室は坪庭に対し開放的にしているので、“底冷え”防止のためにも床暖房が有効です。

 階段室の吹抜部分については、輻射式の暖房では能力が足りないので、給湯能力の余った分を利用して、温水式のファンコンベクターを設置しました。さらに、個室にも温水コンセントを設置し、限られたエネルギーを有効利用できるようにしています。

◆図面はこちら

構造模型

場所

神奈川県藤沢市

構造・階数

地下RC造+木造2階建

敷地面積

約106m2 (32坪)

用途地域

第一種住居地区/準防火地区

建蔽率/容積率

60%/200%(接道幅員4mのため160%に低減)

建築面積/建蔽率

約57m2(17坪)/53%

延床面積/容積率

約113m2(34坪)/約106%

設備

電気、給排水、ガス、空調、床暖房、TV、電話、インターホン

構造設計

SIGLO建築構造事務所    山口吉紀

設備設計

五十嵐設備設計         五十嵐隆一

施工

日進建設

竣工 2003年11月
本体工事費  約2400万円(71万円/坪)

掲載 

はじめて建てる「こだわり住宅」(講談社)

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