TOP PAGEPersonal Profile世界の建築と街を訪ねるフランス現代建築レポート>ラ・ヴィレット公園

UEMOT PLANnING & DesiGN OFFice

思考の墓場:ラ・ヴィレット公園

バーナード・チュミ、建設中、パリ

Parc de La Villette,Bernard Tschumi

公園の中心をなすプロムナード。全体的に緑が少ないのがまず気になる。

フォーリーと呼ばれる機能のほとんどないオブジェ。フォーリーだけを撮ればまだ絵になるが・・・。

形は変わるけど本質は同じなのですぐ飽きる。大きさもでかすぎるし、色も赤ばかりで飽き飽きする。

空間がないので写すのはどうしてもフォーリーばかりになってしまう。

 あのコンペは一体何だったんだろうか。ラ・ヴィレット公園のコンペは日本の建築雑誌にも盛んに紹介され、21世紀のランドスケープデザインの行方を決めるなどとセンセーショナルな見出しがつけられていたが、現在、公園の全貌がほとんど姿を現したのにもかかわらず、このプロジェクトを積極的に取り上げるメディアはほとんどない。我々の間でも話題になることはほとんどなく、興味は急速に失われた。本来、ものづくりとは実際のものが立ち上がる瞬間が最も大切なはずであるはずなのに、このプロジェクトにその常識は通用しなかったようである。

 建築や都市、造園といった世界では、実空間に対していかにアプローチするのかが問われるべきなのに、ヴァーチャルなイメージと現実との間でいつしか逆転現象が起きている。料理は食ってなんぼである。洋服は着てなんぼである。同じく建築や都市はそこで過ごしてみてなんぼであると思うのに。

 オーバーレイされたシステムの面白さがこの公園のデザインの売りだが、実際にこの公園を歩いてみると、そういう面白さは全くといっていいほど感じられない。何と何がどう重なってるかなんて鳥瞰的な視点でしか把握しようがないからだ。もちろん、システムなんか読めなくとも実際の空間が面白く、かつ気持ちよく出来ていれば問題はないのだが、この公園には空間とかシーンとかいうものがほとんどない。空間がないというのはおかしな表現だが、空間になってないという方が正確な表現かもしれない。多様性がもたらす変化や意外性の妙もなければ、広大な空間がもたらす抜けの良さというのもない。緻密で気持ちが良くデザインされた場があるわけではなく、かといって埋め立て地や工場を訪れたときのような日常からかけ離れた非日常的な意外性があるというわけでもない。いくらオーバーレイといっても個人が単一の理論に基づいて計画したものであることはみえみえで、オーバーレイによってたまたま作られた状況も見苦しくかつ予定調和的なものでしかない。チュミのコンセプトの呪縛にがんじがらめに縛られた単調な空間がただただ漠然と広がるのみである。緑が少なく人工的な空間ばかりであることもただただ閉口する。形のバリエーションはあるものの同じコンセプトから導き出されたフォーリーは単に単調さを反復するだけ。まさに最悪の状況である。

 今考えれば、そもそもこの公園のコンセプトはシステム論や形而上的な文化論といった極めて観念的な次元でしか語られていないのだから、実空間が面白くなる見通しは希薄であったと言える。システムが面白ければ実空間もそれに伴って必然的に面白くなるはずだという保証は全くない。両者は基本的に別物である。もちろん、新しいものを生み出すためには実験や挑戦が必要であることは理解できるし、できて初めていろいろなことに気がつくというのもある程度はやむを得ない。公園とか都市とかはスケールが大きすぎるがゆえにしょっちゅう我々の創造力を大幅に超えてしまうからだ。実際、自分もここまでつまらないとは予想できなかった。

 しかし、問題はなぜ失敗するのかということがいつまでたっても学習できないという点にある。設計というのは一種のシミュレーション行為だから、常に実空間に立ち戻る習慣をもっともっとつけないと、何をやってるんだかわからなくなる。いろいろ考えれば考えるほどすぐさま観念の術中にはまってしまうからだ。そういう次元にとどまっている限り、不毛な失敗は繰り返されるばかりである。実空間はコンピューターゲームの世界ではない。レインボーブリッジをくぐってみたいと言った全日空機の乗っ取り犯のことを我々の業界人は決して笑えないと思う。

 ここを公園として再開発し、音楽都市や科学産業都市などの施設を導入してこの地区の活性化を図るというプログラム自体は評価すべきことだと思う。施設の機能としては一定以上の成果をおさめているに違いない。しかし、空間デザインの善し悪しで場所の印象や居心地というもののかなりの部分が決定づけられてしまったのは不幸なことである。

UEMOT PLANnING & DesiGN OFFice

TOP PAGEPersonal Profile世界の建築と街を訪ねるフランス現代建築レポート>ラ・ヴィレット公園