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2002 FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN

2002/07/06(土):W杯Review・・・W杯はどこへゆく?

 ワールドカップ。終わってみればなんだかあっけないものでした。ブラジルの優勝からまだ6日しか経っていませんが、もう随分前のことのようにも思えます。今回のワールドカップについては、語りたいことはたくさんあるのですが、どうにも言葉にならないというのが正直なところです。何を書こうとしても、ごちゃごちゃのままで形にならないのです。数多くの糸が絡まったままでほぐれない、そんな感じでしょうか。糸をほぐさないと文章にはなりませんが、かといって、無理矢理ほぐすのもなんか違うような気がするのです。

 まあ、これから、腐るほどたくさんのW杯に関する評論が世の中に登場するでしょうから、プロの評論家でも物書きでもない私が、意地張って無理にまとめるのはよしましょう。書きたいことが生じたら<CULT FOOTBALL>のコーナーにでも書くことにします。

 日本といういわば“サッカー不毛の地”でW杯がどれくらい盛り上がるかは未知数でしたが、予想以上の盛り上がりを見せ、大会としてはまずは成功だったことは間違いありません。20年前、いや10年前から考えても、日本でW杯が開催され、これだけの盛り上がりを見せ、しかも代表チームがベスト16に進出するなんてことはホント夢みたいな話です。ひょっとすると、この国でサッカーがフットボールと呼ばれる日もそう遠くはないかもしれません(*1)。

 でも、盛り上がりすぎには正直言って違和感もありました。単に騒ぐためのネタが欲しいだけなのではないか?キレやすい若者の増加とともに日本でも今後フーリガンが生まれるかもしれません。韓国の躍進には拍手を送りたい反面、あの異常なナショナリズムには背筋が寒くなる部分もあります。自国以外はあまり応援しない。空席だらけのスタンドを見るにつけ、日本との国民性の違いも目の当たりにしました。他にもチケットの問題、審判の問題、行き過ぎた商業主義など、今回の大会もまた多くの問題が投げかけられました。

 では、サッカー自体はどうだったのでしょう?はっきり言って、今回のW杯はレベル的にはいまひとつだったと思います。予選リーグの序盤は良かったのですが、特に決勝トーナメントが盛り上がりに欠けました。いい試合は数多くありましたが、本当に心に残る素晴らしい試合はなかったといっても過言ではありません。もちろん、ふだんなじみがないセネガルとかトルコとかアメリカのサッカーも堪能できたのはW杯ならではだと思いますし、クラブチーム優位と言われるサッカーの世界において、国民性が色濃くでるナショナルチーム同士の対戦も悪いもんではないと改めて感じました。でも、何か物足りないのです。素晴らしい試合とは試合の質、勝負としての面白さ、廻りからの注目、全てにおいて最高のものを指すのだと思います。それが実現するのがW杯の良さであり、価値でしょう。今回の場合、勝負として素晴らしい試合は数多くありましたが、それでも質的には十分とは言えません。

 原因は商業主義そのものにあります。W杯というよりもサッカー自体の問題です。金儲けを旨とする人々は牧歌的な状況を決して許しません。試合数は極限まで増やされ、選手は消耗品のように扱われます。今や有力選手の年間の試合数は極限に達しています。韓国選手を抜けないフィーゴ。ミスパスだらけのメンディエタ。ルイ・コスタ、ジダン、デル・ピエロ、ヴェロンに至っては出番すらほとんどありませんでした。疲れ切ったスーパースターを見るのはほんと辛いです。歌いすぎでのどをつぶし、出ない声を必死に振り絞って歌う歌手のようなものです。ブラジルが優勝できた大きな要因はリバウドやロナウドがたまたまケガから復帰したばっかりで、休養十分だったという事情もあるのです。

 あと、スタジアムについては、言いたいことは山ほどあります。採算の見通しのない巨大なスタジアム。ワールドクラスのスタジアムが一気に10カ所も整備されて、サッカー協会はウハウハでしょうが、こんなに必要ないことは火を見るより明らかです。アクセスや周囲との関係もデタラメ。デザインもイマイチ。このような“負の遺産”をこれからどうやって運営していくのでしょう?とにかく箱をでっちあげ、その活用法を必死に考える。この国では日常的に起きている光景ですが、掛け違えたボタンのつじつまを合わせることほどむなしい作業はありません。

 スタジアムの多くが「兼用」であることも不満です。陸連とサッカー協会の妥協の産物として作られた陸上競技とサッカーの兼用のスタジアム。サッカーには不向きなしかもコストも割高になる「兼用」をなぜ選択したのか(*2)?日本では、サッカーだけでは興行的に成り立たないというのが表向きの理由ですが、それこそとんでもない詭弁です。陸上競技で4万人もの観客を集客できるイベントは国体の開会式くらいしかないのですから。陸上競技で最も人気があるのはマラソンですが、マラソンは基本的に沿道で見るもの。国立競技場だって一杯にはならないのです。世界陸上を毎年誘致するつもりなんでしょうか。兼用にするにしても、ラグビー、アメフトとコンサートが出来れば十分なはずでした。市民レベルで使えるトラックは必要かもしれませんが、少なくとも陸上競技にこんな多くの観客席は必要ないはずです。結局、今だに47年に一回しか廻ってこない国体の開会式を想定していることはミエミエでしょう。ただでさえ、スタジアムはダブついているのですから、ボールゲームだけでコンセンサスが得られないのなら、いっそW杯開催地など下りてしまえば良かったのです。

 とまあ、グチになりそうなのでやめときますが、とにかくワールドカップというのは、いい面、悪い面、いやいいとも悪いともつかない“巨大な火の玉のようなもの”というのを改めて実感しました。“火事”とか“嵐”とか“地震”に例えてもいいと思いますがどっちにしても災害のイメージでしょうか。韓国では“ポストワールドカップ症候群”が起きているようですが、あれだけ盛り上げればそれも当然でしょう。W杯はもはや単なるフットボールの世界大会という以上の存在です。単眼的な見方では到底把握しきれない、“錯綜体”のようなもの。だからこそW杯は面白いのです。この巨大な火の玉は一体どこへ向かうのか?4年後も目が離せないことだけは間違いありません。

 

注(*1):soccerという呼び名はサッカーファンには屈辱的な言葉です。soccerはアメリカ英語。イギリスでは当然footballです。世界中footballで通用しているのに、日本ではなぜかsoccer。何も“サッカー不毛の地”の言葉を輸入しなくてもねえ。もはや“サッカー不毛の地”を脱却した以上、言葉も早くfootballに変えなくてはなりません。

注(*2):サッカー専用競技場は、埼玉、鹿島、神戸の3会場。野球との兼用が札幌。あとの6会場(仙台、横浜、新潟、静岡、大阪、大分)は陸上競技場との兼用。

P.S.:W杯特集はひとまずこれで終わりです。長らくお付き合いありがとうございました(笑)。

2002/06/30(日):W杯#18・・・余韻

 ついに終わった。長かったようでもありあっという間だったようでもあり、いろんなことがあった一ヶ月だった。アジアで初めてのW杯。初めての共催。初めての自国開催。初めてづくしのW杯は今までとはちょっぴり違っていた。振り返りたいことは山ほどある。でも、今は少し余韻に浸っていたい気分。決勝戦は往々にしてつまらないものになりがちだけど、今日はいい試合だったから。

 ロナウドの復活&大活躍、そして、ブラジルの勝利はとても嬉しい。個人の才能よりも組織の力がクローズアップされたこの大会。でも、結局、最後にものをいったのはシステムの力よりも個人の持つ才能の力。個人技vs組織、ブラジルの3Rvsカーンと言った短絡的な図式で語られるものでもないけれど、それについては、またじっくりと考えてみたい。

 今日の試合の陰の立て役者は再三にわたって好セーブを連発していたキーパーのマルコス。そして最後まで集中を切らさなかったブラジルの3人のディフェンダー。もうひとり、コッリーナ主審を忘れてはいけない。今日のレフェリングは世界一の試合にふさわしい完璧なコントロールだった。名審判は名演出家。彼を見ているとまさにそういう感じがした。

 いつまでも余韻に浸っているわけにはいかないけど、たぶん一週間くらいはリハビリが必要かもしれません(笑)。(ブラジル2−0ドイツ)

2002/06/29(土):W杯#17・・・サッカーをすることの純粋な楽しみ

 ワールドカップに出てくる選手達はなぜピッチに立っているのか?お金のため?名誉のため?そう、ワールドカップは選手達が自らサッカーを“楽しむ”場所ではない。

 実はワールドカップで最も興味のない試合が3位決定戦だった。少なくともこの試合を見るまでは・・・。オリンピックと違いW杯では3位も4位も大差ない。実際、過去のW杯でも3位決定戦はメンバーを落としてしまうことが多いし、迫力を欠いた試合が多かった。でも、この試合は違った。

 疲れもある。準決勝に敗れて勝負に対するモチベーションのダウンも否めない。軽率なミスもあったし、中盤のチェックも甘かった。でも、楽しかった。おそらく、見ているこちらよりもピッチの選手達の方がずっとずっと楽しかったはずだ。3位という名誉が得られる楽しさではなく、サッカーをすることの純粋な楽しみ。個々の選手達が持つ原風景、ソウル郊外の広場やイスタンブールの路地裏といった風景がフィールド上に蘇っていた。

 そもそもW杯の本当の面白さは勝負よりもピッチ上のそのような風景をかぎ分けることにある。プレーヤーやプレースタイルは世界中のあらゆる場所と繋がっている。ローマの街角。リオの砂浜。ブエノスアイレス近郊の草原。マドリッドの赤茶けた原っぱ、という具合に・・・。でも、W杯が肥大化し、勝負のみが究極の目的になってから、次第にその様相も様変わりしつつある。土臭い個性の発揮よりもまずシステムとして機能することが第一とされ、ファンタジーが消えファンクションばかりがフィールドを支配するようになった。今回のW杯も牧歌的な中盤を形成するようなチームは早々と消え去っている。

 でも今回、勝負がそれほど重要でない3位決定戦のような舞台が、決して無駄ではないことが証明されたかもしれない。相手を欺いてドリブルで交わしたり、リズム良くパスを交わしたりすることがいかに楽しいものなのか。勝負としてのスポーツではなく、楽しみとしてのスポーツ。勝負へのこだわりが少ない試合だったからこそ、純粋にいいプレーが引き出されていたように思う。

 試合後、両チームの選手は互いに肩を組み、トルコと韓国の国旗を両方掲げて場内を一周した。いい試合は相手がいないと成り立たない。その意味では対戦相手は敵ではなく仲間だ。観客席には太極旗ではなく、なんと月と星をかたどった巨大なトルコ国旗が広げられていた。このスタジアムの雰囲気が全てを物語っていた。選手も観客もテレビの視聴者も同じ時間を共有できた素晴らしい試合だったと思う。(トルコ3−2韓国)

2002/06/25(火):W杯#16・・・仕掛けることの重要性

 韓国、敗れたけれど、良く戦った。ドイツが韓国のお株を奪うようにサイドをうまく使ってきたため、得意の囲い込みもできず、過去2試合の疲れからか、動き出しも今ひとつだった。それでも、高さのあるドイツに対してディフェンスは最後まで集中を切らさずにねばり強く付いていっていたし、攻撃も要所では人数をかけてゴールに迫っていた。最後のところはドイツの冷静な対応にしてやられたという感じだ。ドイツはいつもながら守護神カーンの存在が大きい。

 でも、これだけやれれば十分だろう。どんなチームとも互角に戦えるという自信はものすごく大きな財産だと思う。韓国を見ていて気持ちがいいのは、常に相手に対して先手を取って仕掛けていくその姿勢。ここはというところでは失敗を恐れず勇敢に前進する。それが見ている人の心を掻き立てる。日本のように、技術があっても安全第一ですぐ戻してしまっては、開きかけた扉もすぐに閉じてしまう。試合が終わった後、スタジアムは静かな拍手に包まれていた。熱狂的な応援もちょっと食傷気味だったので、むしろこの静かな拍手の方がよっぽど意義深いという感じがした。

 いよいよ、明日はブラジルvsトルコ戦。梅雨寒で気温も低いのでいいゲームが期待できそうだ。ブラジル、コケないでちゃんと勝ってくれよ!!(ドイツ1−0韓国)

2002/06/23(日):W杯#15・・・ベスト16で満足?

 16強という結果には満足している。それが、今回の日本チームの成績に対する大方の評価であるようです。確かにノルマは果たしました。でも、ホームの有利さは想像以上でしたし、ヨーロッパのチームのコンディションの悪さやラッキーな組分けからすれば、もっと上は狙えたはずでした。サッカーの場合、ホームアドバンテージというのはもの凄いものがあるのです。ワンランク下のチームでもホームの利があれば互角以上には戦える、それが世界の常識です。だから、今回ベスト16だからと言って、次回のドイツ大会も同レベルの成績が収められると思ったら間違いでしょう。韓国の活躍でアジア枠が減ることはないと思いますが、韓国、中国、サウジアラビア、イランを倒して再び本戦に出場できるという保証もどこにもありません。昨日、セネガルvsトルコ戦がありましたが、ほんとはここに日本がいるはずだったと思うとやるせない思いで見てました。潜在能力はあってもそれを引き出すことが出来ず、そこそこの結果で終わってしまうのが日本人の特性だというのであれば、今回の結果は妥当なのかもしれません。でも、そんなこと自ら認めてしまってはお終いです。

 正直言って、トルシエ監督の功績が良くわかりません。選手もサポーターも彼だからこそここまで来れたという言い方をしていますが、果たして本当なんでしょうか?スポーツジャーナリストの金子達仁氏の「多くの人がトルシエ監督を評価しているが、一体彼のどういうところを評価しているのかは見えてこない」という意見に私も同感です。

 トルシエ氏の功績はチームの競争意識を高め、戦う姿勢を植えつけたという点にあります。熱く、一生懸命取り組んでいたことは確かです。その点については大いに評価できると思います。しかし、どうやって勝ちに行くのか?そのためには何をしなくてはならないのか?という肝心な点については、全く持って意味不明な監督でした。オートマティズムという割には全体の有機的な動きというのはなく、攻撃は常に個人の力頼みでした。常にその方針は一貫せず、いろんなやり方がテストされました。変わらなかったのは、フラットスリーのディフェンスのやり方だけでしょう。しかも、そのディフェンスにしても、まともに機能しはじめたのは、本来のラインを高く保つやり方ではなく、無理に押し上げないようにし始めてからだったのは皮肉なことでした。

 対照的なのはヒディング監督が率いる韓国です。結果論で言っているのではなく、第一戦を見たときに差は歴然としているなと思いました(6/4の日記参照)。ヒディング・コリアの戦術は実に単純です。守備ではどんな状況でも常に数的優位をつくりだし、相手を囲い込んでボールを奪いに行く。奪ったら両サイドを起点としてフィールドをできるだけ広く使い、両翼からえぐる攻めをする。守備ではスペースを狭くし、攻撃では出来るだけスペースを広く使う。私は勝手に「伸縮戦法」と名づけていましたが、攻撃と守備との切替が絶妙でした。もうひとつは動きだしの早さ。守備でも攻撃でもとにかく相手より先に動き出し、相手に考える暇を与えない。それを可能にしているのが、豊富な運動量とチーム全体での戦術的な意図の共有であるわけです。常に先手を取る戦法なので相手に対して、心理的にプレッシャーをかけ続けることができ、精神的にも肉体的にも次第に相手は疲労していきました。ホームアドバンテージも最大限に活用した実に賢いやり方です。しかも、特質すべきはそういう方針を何ヶ月もかけて徹底して取り組んできたということです。

 ヒディング・コリアは基本的には3・4・3のシステムを採用しています。バックライン3人、中盤4人、FWが3人という構成です。FWを3人にしているのは、両翼に起点を作りたいという意図によるのでしょう。両翼にす早くボールを送り込むことが出来れば、相手の守備の組織が固まっていない早い段階でそれだけ効果的なサイドからのクロスボールを中に入れることができます。そして、もしボールを失っても真ん中で失うよりはリスクが少ないです。どうにもならないときには、取りあえずタッチに蹴り出しておけばその分時間を稼ぐことができます。日本のようにFWが2人の場合、サイドを突くためにはFWの1人が流れるか、サイドハーフが押し上げるかという選択になりますが、それだけ時間がかかるし、個人への負担も強くなります。ましてやワントップなんて、日本のFWの力量ではあり得ない選択だと思います。

 もちろん、トルシエ監督はプロですから何らかの意図があってのことだとは思います。ボールを素早く動かすということだけが戦術ではないし、2トップにもメリットはあるでしょう。でも、勝つために意図するものは何なのか?どのような方法を軸として攻撃するのか?本人の口からもあるいは、サッカーの専門家あるいは彼を支持するサポーターからも明確な言葉はついぞ聞かれませんでした。派手なパーフォーマンスや都度繰り返されるわけのわからない哲学も冷静になって見ると、心に残るものではありません。

 イタリア戦でヒディング監督は1点リードされた後半38分、守備の要であるホン・ミョンボを下げてバックを2人にし、FWにチャ・ドゥリを投入しました。友達3人でその試合を見ていましたが、その瞬間どよめきの声が上がりました。上背のある選手を入れロングボールを放り込む。残り時間が少ないパワープレーの状況ではよく使われる戦術ですが、トルコ戦でのトルシエ監督の煮え切らない采配とは対照的な胸のすくような鮮やかな采配でした。選手も、監督も、サポーターも、とにかく、何が何でも7.32m×2.44mの四角い枠の中にボールを押し込める。その一点だけに意識が集中していったのです。

 一体、日本サッカー協会はトルシエ監督のどのような能力に期待していたのでしょう?そして、何が期待通りで何が期待はずれだったのでしょう?それが見えないのがおかしいのです。サッカー協会とトルシエ監督の確執も随分ありましたが、一体何が争点になっているのかは良くわかりませんでした。結局、子供じみたボールの奪い合いに過ぎなかったのではないでしょうか。

 トルシエ監督が支持されているのは、日本ならではという感じがします。おそらくこの国では、裏付けが積み重なった人物よりも、中身は乏しくとも派手なパーフォーマンスで引っ張ってゆく元気づけ型の指導者が好まれるのでしょう。小泉首相、田中真紀子氏、星野監督、長島氏、そしてフィリップ・トルシエ氏。ある意味で似ているとは思いませんか?

 

P.S.:テレビで岡田元代表監督が韓国の強さをフィジカルの強さ、精神力といったありがちな切り口で語っていました。ボールキープがうまくなったとも・・・。それは素人でも分かること。でも、それだけじゃ勝てないでしょ。専門家としてそんな斬り方しかできないのは情けない限りです。次も外国人監督じゃなきゃダメですね。

P.S.:フィリップ・トルシエ氏は決勝トーナメント進出を果たしたことはない。だから、トルコ戦の采配ミスを彼のせいにすることは出来ないと言っていた人がいました。じゃあ、なぜ、そんな経験の浅い人を監督に据えたのか?経験は浅くとも彼ならばやってくれるだろうという確信がなければ、人に仕事の依頼なんてできないはずですが・・・。

   

2002/06/19(水)am2:00:W杯#14・・・意志の不在がもたらした悲惨な結末

 昨日の試合(日本vsトルコ戦)に関していろいろと思うことがあり、真夜中まで起きてこの文章を書いています。負けたのは仕方がありません。でも、チームとして一体何をしたいのか?最後までそれが良く見えなかったことには落胆しました。決勝トーナメント進出の意義は確かにあると思います。でも昨日の試合こそ実力を出し切るべき試合だったのです。結果よりも内容的に見るべきものに乏しかったことがこの4年間の意義を一気に失わせてしまいました。

 意志無き挫折というのは決して薬にはなりません。実力を出し切って飛び散ったならともかく、消化不良のまま終わるというのが最もマズイのです。日本が試合を重ねるにつれ、世間の人はみなニッポン凄い、トルシエありがとうみたいな論調一色になって行きました。もちろん、4年前に比べれば進歩しているし、頑張っていたのは確かです。でも、だからといって手放しで喜べるような状態ではなかったはずです。5/25や6/4の日記でも書いたとおり、私はトルシエジャパンをいまひとつ評価していません。戦術的な一貫性に乏しく、どうやって勝ちたいのかという意志が見えないからです。運にも恵まれどうにか勝ち進んではいましたが、本当に強い相手と当たったら、馬脚を現すに違いない。そういう心配は常に持ち続けていました。

 昨日の試合、先発メンバーを見てまず驚きました。柳澤、鈴木のコンビではなく、いきなり西沢のワントップ。サントスの先発はいいとしても、使われたポジションは不慣れなトップ下。これまでやって来たやり方をなぜ突然変えてしまうのでしょう。攻撃の軸は一体誰なのか?土壇場になってやり方を変えるのは、明確な意志や方針というものがないことを自ら証明するようなものです。交代がまた意味不明でした。サントスを後半早々下げてしまいましたが、両翼をえぐる攻めをするなら、市川と同時に使うのでないと意味がありません。組織的な攻めができないニッポンは結局個人の力に頼らざるを得なかったのですが、ひとりでも突破できるサントスを下げてしまったので、その可能性もほとんどなくなってしまいました。極めつけは市川と森島の交代。交代で出した選手をさらに交代させるというのは、よっぽどの非常事態でなければ、本来あり得ないことです。実際、選手交代とポジションの移動により、選手は大混乱に陥っていました。パスは乱れ、リズムが失われていきました。この試合はトルコに負けたのではなく、自らの策におぼれて負けたのです。

 問うべきは結果ではありません。結果はどちらにも転がるものです。問題は「意志の不在」ということにあるのです。大事なのは技術よりも戦術よりも何をしたいのか?その意志なのです。単に監督や選手だけの問題ではありません。トルシエを選んだのは協会、監督や協会を支持しているのはサポーターなのですから。サッカーは国民性が表出する奥の深いスポーツです。協会もサポーターもメディアもサッカーの専門家もその他の国民も、自らの目を信じることなくムードに流されていってしまう。現実をしっかり見据えることができないという致命的な欠陥。そしてある日突然、現実とのギャップが明らかになる。この国のもつ体質がワールドカップという舞台でたまたま露呈しただけの話でしょう。

 日本vsトルコ戦を見た後、用事があって外出し、再び事務所に戻って韓国vsイタリア戦を見ました。韓国チームの意志の力の素晴らしさ、前進する力の素晴らしさ、タナボタ的な夢を描くのではなく、目標を自ら現実のものとして勝ち取ろうとする情熱。ワールドカップの歴史に残るようなもの凄い試合でした。韓国が終始イタリアを圧倒し、あのイタリアが弱々しく見えました。韓国の勝利はフロックではなく、全く持って正当なものです。アジアのサッカーがヨーロッパのサッカーをうち砕くシーンを目の当たりにして震えが止まりませんでした。

 日本と韓国の違いは片や世界16強、片や世界8強(以上)という違いではありません。選手の質は日本の方がむしろ上回るぐらいです。しかし、2つの試合を見比べて、韓国と日本の間に横たわる意志の差というものをまざまざと見せつけられました。夢を描いてそれが実現するのをタナボタ的に待ち続ける日本的なメンタリティー。それは目的を確実にたぐり寄せようとする情熱的な態度とは対極をなすものです。「夢をありがとう」「感動をありがとう」といったようなチープなメッセージが、今日あたりメディアを駈けめぐってゆくことでしょう。でもそれでは何も変わらないのです。そうやって常にものごとをオブラートに包んでゆく。この国の将来には間違いなく暗雲がたれ込めています。(トルコ1−0日本、韓国2−1イタリア)

 

P.S.:今日のスポーツ紙には案の定「感動をありがとう」の文字が・・・。「日本サッカーの経験のなさで負けた。トルコはACミランで、日本は京都。その差が出た」というトルシエ監督の談話にも納得がいきません。いやな比喩ですね。韓国だって経験はないのですから。一番経験がないのは、トルシエ監督。あなたです。(6/19 am9:00)

2002/06/18(火)am0:50:W杯#13・・・スキだらけのカナリア

 ブラジル、勝つには勝ったけどスキだらけ。攻めてはボールの持ちすぎでリズムがなく、守ってはバックラインの前に広大なスペースが・・・。現代サッカーで相手にこんなにスペースを与えては、主導権を握られるのは当然だ。対照的にベルギーは日本戦とは別人のような動き。ベルギーってこんなにパスをつないでくるチームだったっけ。ブラジルを救ったのは、キーパーのマルコス。そしてリバウドとロナウドの2人のスーパースター。運もブラジルに味方した。これだけスキだらけなのに勝ってしまうのは、やはりブラジルはすごいということか。

 でも、次このような戦い方をしたらまず勝てないだろう。かならず立て直してくるとは思うけど、数日の間でどれだけやれるかがみものだ。イングランドとの試合は最高のガチンコ勝負となるに違いない。(ブラジル2−0ベルギー)

2002/06/15(土)pm11:55:W杯#12・・・カウンター攻撃の限界

 今日からいよいよ決勝トーナメント。ここからは一試合たりとも目が離せない。ワールドカップがワールドカップたるゆえんは決勝トーナメントにある。一発勝負だからどの試合も勝負へのこだわりは凄いけど、こだわりがいい方へ作用する場合と悪い方へ作用する場合がある。つまらない試合はとんでもなくつまらないし、面白い試合はとんでもなく面白い。その落差の大きさもトーナメント方式の面白さ。超A級のとんでもない試合に出会うこと。そのような試合がどこに隠れているのかを嗅ぎ分けるのもW杯のひとつの楽しみ方だと思う。

 昼間行われたドイツvsパラグアイは両チーム手堅さ比べといったジリジリとした内容。それでも手を変え品を買え攻め続けるドイツに対し、パラグアイは攻撃の手数がとにかく少ない。守って守ってタテ一本だけじゃあ、なかなか点は取れない。どうにか持ちこたえていたけれど、終了間際に失点して万事休す。

 夜の試合はイングランドvsデンマーク。カウンター攻撃主体のチームが3点も取られてしまってはなすすべがない。内容的にはハイレベルだったけど勝負としてはやや緊迫感に欠ける展開となってしまった。ここにフランスがいたらなあ。いまさらだけど、悔やんでも悔やみきれない。

 でも強い方が順当に勝って良かった。番狂わせもセネガルのような攻撃的なチームが勝ち進むのは爽快だけど、守って守ってカウンター一発だけのチームが勝ち上がってくるのは正直言って不愉快だ。カウンター攻撃っていうのは、相手が攻めてこなくては機能しない。相手が攻めてくることを前提とした作戦なんて興ざめだ。だって、両方とも守りに入ったら試合にならないでしょ。デンマークとパラグアイには申し訳ないけれど、あなた達の出番はもうおしまい。決勝トーナメント進出で十分すぎる成果だと思う。(ドイツ1−0パラグアイ、イングランド3−0デンマーク)

2002/06/14(金)pm11:00:W杯#11・・・茫然

 ポルトガルが終わった。韓国の前になすすべもなく・・・。敗退は仕方ないにしても内容が悪かった。フィーゴは全くの期待はずれ。そしてなんとルイ・コスタはベンチを温めたまま。ジダンもルイ・コスタもヴェロンもほとんど見れないままサヨナラなんて、なんだかなあ。序盤はかなり盛り上がったW杯だけど、ここへ来てちょっぴりトーンダウン。日韓揃って決勝トーナメント進出だから本来ならば言うことないはずなんだけど、サッカーファンとしては見たいチーム、選手が続々と消えてゆくのは寂しい。

 それにしても、韓国はすごかった。攻守にわたってポルトガルを圧倒。次はイタリアとの対戦だけど、おそらく彼らは本気で勝ちに行くつもりだろう。今日の彼らの動きを見ているとイタリアに勝つのも夢ではない。(韓国1−0ポルトガル)

2002/06/14(金)pm6:00:W杯#10・・・喜びの質の違い

 ニッポン、決勝トーナメント進出!!おめでとう。こないだのロシア戦の勝利が爆発的な喜びだったとすれば、今回は静かに噛みしめる喜び。喜びにも質の違いがありますね。開催国としての最低限のノルマは果たしましたが、当然、次も勝って欲しいです。パスのリズムも徐々に良くなってきているので、いい感じなんではないでしょうか。(日本2−0チュニジア)

2002/06/14(金)pm0:45:W杯#9・・・取らぬたぬきの・・・

 いよいよ、日本vsチュニジア戦。当然、仕事は3時で切り上げ試合観戦に専念します。観戦禁止とか意固地になって働かせる会社もあるみたいですが、どうせ気になって仕事にならないんだったら、休みにすればいいのにね。ふだんしっかりと働いていれば別に後ろめたいこともないでしょう。

 決勝トーナメント進出はもちろん果たして欲しいけど、それ以上に今日は勝利が重要。絶対勝ってH組1位通過を果たさなくてはなりません。2位通過だと決勝トーナメントに進出してもそこでThe end。相手はブラジルですからね。ブラジルのフェリペ・スコラリ監督は「日本とは当たりたくない」と言ったそうですが、それはこっちもおんなじ。1位通過だと相手はトルコだから雲泥の差。トルコも強いけど、ブラジルよりは100倍くらいもましでしょう。地の利を考えると互角には戦えます。トルコに勝つと次の対戦はセネガルとスウェーデンの勝者。おいおい、もしかするとこれも勝っちゃうぞ。そうなると、準決勝でブラジルと対戦という夢のようなシナリオが・・・。

 そんなにうまく行くのやら・・・。数時間後、果たしてどうなっているんでしょうか。

2002/06/14(金)am8:30:W杯#8・・・1点の重み

 イタリアvsメキシコ。簡単に決められそうな場面が山ほどあったのにそれを決められず、決まったのはあんな難しい点。それまで全く冴えなかったモンテッラの振り向きざまのキラーパス。それに反応していたデル・ピエロも凄い。W杯の重圧、1点の重みを痛感した試合。でもとにかく、アズーリ、残って良かった。タレント揃いのイタリア&テクニシャンのメキシコ。この組は結果的には◎。

 それにしても、他チームが四苦八苦する中、ブラジルだけが異次元の世界を突き進んでいる。ブラジルの強さは本物なのか?楽しそうに動き回る姿はまるでフィールドを泳ぐアメンボ達のよう。特に嬉しいのが怪物ロナウドの復活。相手ディフェンダーをものともせずぶっちぎってゆく様は見ていて爽快だ。(イタリア1−1メキシコ、ブラジル5−2コスタリカ)

2002/06/12(水)pm10:50:W杯#7・・・アルゼンチンお前もか

 アディオス!!バティステュータ、クレスポ、オルテガ、ヴェロン、クラウディオ・ロペス。アディオス!!アルヘンチーナ。第一戦を見た段階では、さすが優勝候補、強い!!っていう感じだったのに・・・。一体、アルゼンチンに何が起こったのか?フランスに続き2強が揃って1次リーグ敗退なんて・・・。アズーリ、お前だけは裏切らないでくれよ。そして我がニッポン!!(アルゼンチン1−1スウェーデン)

2002/06/11(火)pm11:00:W杯#6・・・カード乱発 ドイツvsカメルーン

 イエローカード16枚、レッドカード2枚が乱れ飛ぶ試合。でも本当のレッドカードはこの日の主審。そこまで荒れた試合じゃないでしょ。主審がすっかり試合をぶちこわしてしまった。そしてイエローカードは放送した日本テレビ。中津江村からの中継なんてやるくらいなら、もっと試合そのものをちゃんと伝えるべき。日テレはサッカー中継なんてやらなくて巨人戦だけでもう結構。(ドイツ2−0カメルーン)

2002/06/11(火)pm7:00:W杯#5・・・呪われたフランス

 フランス、ゴールが遠かった。苦労して苦労して攻め続けているのに、ポストに嫌われ、キーパーにセーブされ・・・。そして、デンマークのなんの変哲もないカウンター攻撃で2失点。もうやんなっちゃう。3試合で一体何回ポストに当たったの?呪われているとしかいいようがない。ジダンもアンリももう見れないなんて・・・。ガックリ。(デンマーク2−0フランス)

 「家に帰って泣くわ」と、女学生のゲールさん

 「たかが、スポーツだ。だけど悲しい」ドラノエ・パリ市長・・・from asahi.com

2002/06/11(火)am8:00:W杯#4・・・読めない展開

 いよいよ、今日から1次リーグの総決算である第3ラウンドが始まります。どこが決勝トーナメントに勝ち残るのか?今週はまさに目が離せません。といっても、開幕からずーっと目が離せない日々が続いていますけど・・・(笑)。

 今回のワールドカップほど混沌としている大会はありません。崖っぷちにたたされているフランスだけでなく、第1ラウンド好調だったアルゼンチンやイタリアが第2ラウンドでつまづいたり、一戦ごとに状況が大きく変わるので、予想が非常に難しくなっています。初戦好調だった韓国も昨日のアメリカ戦を引き分けてしまったことで、状況が大きく変わってしまいました。次のポルトガル戦は少なくとも引き分けが必要です。いくらホームといえども、上昇気流に乗りつつあるポルトガルに対して互角の戦いを強いられるという大変な事態になってしまいました。韓国はいいサッカーをしているだけに、決勝トーナメントには進んで欲しいですが、かといって、ポルトガルがここで消えてしまうなんて想像すらしたくありません。ルイ・コスタ、フィーゴ、セルジオ・コンセイソンetcが織りなす華麗な中盤は、本大会の華となるはずだったのですから・・・。

 振り返って、我がニッポンはおとといの対ロシア戦の勝利がめちゃめちゃ大きかったです。昨日のベルギーvsチュニジア戦が引き分けに終わったことで、決勝トーナメントへの進出の可能性はさらに大きいものになりました。次の相手はチュニジア、しかも負けても一点差までならいいのですから・・・。現時点で決勝トーナメント進出を決めているのがブラジル、スペインだけという状況の中、前大会では全敗のニッポンがこんな余裕の状態で1次リーグ最終戦を迎えられるなんて、一体誰が想像したことでしょう?チュニジアを侮ることはもちろんできませんが、チュニジアに負けるようでは、もうその時点で決勝トーナメント進出の資格はないですね。

 ここまで混戦となっている理由は、各チームの格差が少なくなっていることに加え、やはり、ヨーロッパのリーグの直前までの過密日程と高温多湿の気候が影響しているようです。有力チームであればあるほど直前までの過密日程にさらされています。怪我人やコンディション不良の選手を抱えたまま、開幕戦に突入というチームもかなりありました。イングランドの関係者の「キャンプの目的はまず疲れをとること」という発言がそのことを物語っています。それに加え、蒸し蒸しする東アジア特有の気候。最後まで動きが落ちなかった日本チームに比べ、もともと体力があるはずのベルギー、ロシアが後半あきらかにペースダウンしたことからしてもその影響は想像以上のものがあるのかもしれません。

 おそらく第3ラウンドでもまだまだ番狂わせは起きるでしょう。でも、Hグループの波乱だけは勘弁です(笑)。

2002/06/09(日):W杯#3・・・ベストパーフォーマンス 日本vsロシア

 日本でワールドクラスのものすごい戦いが連日に渡って繰り広げられている。そのことを半ば信じられない思いで過ごしています。でもそれにも増して、こんなにも素晴らしい正真正銘のワールドクラスの試合を日本チーム自身が演じることができるなんて、それ以上の驚きでした。とにかく90分間相手に主導権を渡すことなく戦いきったこと。強いチームに対して受け身になるのではなく、相手を呑み込む勢いでプレーし続けたこと。それが今日の試合の全てだったと思います。

 今日の試合、日本のプレスは実に有効に機能していました。ロシアはベルギーほどプレッシャーがきつくなく、バックラインのサイドにもスペースがありました。そこをついて、FWへのくさびのボールもしっかり入っていましたし、サイドに流れた選手へのロングボールも的確に入っていました。結果、中盤の選手がしっかりと押し上げることが可能になり、単発でない分厚い攻撃ができていたと思います。守備もベルギー戦のように安易にラインを押し上げることなく、真ん中のスペースをしっかりと消し、守備ラインの手前に出来るスペースも、戸田、明神、稲本、そして時には中田(英)や小野までがケアして相手に自由にさせないようにしていました。パスの精度やリズムも良く、第一戦ではなんとなくぎくしゃくしていたパス回しも今日の試合では実にスムーズだったと思います。ミスパスやトラップミスもほとんどなく、集中力も90分間とぎれることはありませんでした。第一戦のようなスリリングな展開ではなく、1−0の最小得点での試合でしたが、内容的には今日の方がはるかに良かったでしょう。おそらく、代表チームが演じた過去最高のパーフォーマンスではないでしょうか。

 サッカーはほんとデリケートなスポーツです。わずか数日間でこんなにも見違えるなんて正直言って予想外でした。もちろん、数日でチームの持つ能力自体が変わるわけはありません。ちょっとしたモティベーションの差、チーム同士の相性、戦術的意志の差によって、現れてくるパーフォーマンスというのがここまで大きく変わってくるものか。それを改めて実感しました。ベルギー戦を見た段階ではほんと日本チームがここまでやれるなんて考えてもいませんでした。

 もちろん、もっと強い相手に当たれば、今日のようなパーフォーマンスを再び演じるのはまた難しくなるでしょう。でも、これくらいのレベルのゲームが出来るならば、どんなチームと対戦してもそう大きくひけをとることはないと思います。課題としては、シュートの精度をもっともっと上げること。特に2人のFWの積極的なゴールへと向かう動き。それと、相手がスペースを消してきたときにも今日のような積極的な動きが出来るかどうか。とにかく、日本サッカーの輝かしい一歩を築いた試合だったことは間違いありません。(日本1−0ロシア)

 

2002/06/04(火)pm11:00:W杯#2・・・「戦術的な意思統一」の差

 凄かったですね。日本vsベルギー戦。勝ってもおかしくない内容でしたが、前回は3連敗だったことを考えると、まあ仕方がないでしょう。まずまずの結果かなと思って、続いて韓国vsポーランドも見ました。日本もなかなか頑張ったなと思ったけど、韓国のゲームを見て考えが変わりました。いやあ、いつの間にか差がついてしまいましたね。韓国サッカーの方が日本よりも断然良かったです。一番いいのは何をしたいのかという戦術的な意志統一が出来ていること。局面における個人個人の判断や集中も素晴らしいものがありました。

 それに引き替え、我がニッポンはチームとしての攻撃の意図がいまひとつよく見えません。得点が生まれたのも相手が疲れてスペースが広がったところを個人能力で強引にこじ開けた結果。相手の守備陣形が整っていた前半はほとんど攻撃の糸口すらつかめず、ピンチの連続だったわけですから、90分間体力が持続できるチームと当たったら、勝つのは難しいでしょう。

 個人の能力では韓国よりも日本の方が上かもしれません。でも、チームとしては現時点では間違いなく韓国の方が上。韓国は明らかにここに照準を合わせて、長い時間をかけて意志の徹底に取り組んで来た結果が出ています。対するニッポンはその間リスクへの対処のためのテストに明け暮れてしまった印象があります。ポジショニングが均質で、攻撃にかかった時の選手同士が連動するダイナミックな動きが少ないので、強いチームと当たったら攻撃に関してはあまり機能しないでしょう。守備に関しても上がるのか残るのかなど意思統一にあいまいな部分があり、この試合でもそこをつかれて2失点してしまいました。次の試合までにはある程度修正してくるでしょうが、数日で一体どれだけのことが出来るのでしょうか?

 グループ1位になってベスト8までは何とかいって欲しいと思っていたのですが、グループ2位になんとか滑り込んでくれれば上出来かもしれません。浮かれてばかりはいられない今日の試合でした。(日本2−2ベルギー、韓国2−0ポーランド)

2002/06/04(火)am7:00:W杯#1・・・「取り越し苦労」と「案の定」

 開幕してまだ4日なのに、こんなにヒートアップしていては先が思いやられます(笑)。あと26日間もあるのに・・・。野球が第一のこの国ではあまり盛り上がらないのではないかと危惧していたのですが、どうしてどうしてW杯はやはりW杯。超A級の試合こそまだありませんが、どの試合もW杯らしいハイレベルな内容で、思わず画面にくぎづけになってしまいます。スーパースター達の度肝を抜くプレーはやっぱり凄い。スペインvsスロベニア戦のスペインの2得点(ラウル、バレロン)、昨日の試合のリバウド−ロナウド、トッテイー−ビエリのホットライン。バティー、オルテガ、ヴェロン、レコバ、ネスタ、カンナバロ、バラック、クローゼetc。挙げればキリがありません。ジダンのケガだけが心配です。早く良くなって欲しいものです。

 盛り上がりについては全くの「取り越し苦労」でしたが、「案の定」だったのはチケット問題。2大会連続でこんな大問題を起こすなんてFIFAっていうのは一体どういう組織なんでしょうか?これだけ多くの人が見たがっているのに、売りに出されてないチケットがあるなんて信じられません。日本と韓国の組織委員会は訴訟も辞さないと言っているようです。訴訟でもなんでもやってくれという感じですが、今はとにかく残席の販売に全力を注いでもらいたいですね。

 空席の理由はこれらの売りに出されていないチケットの他に広告代理店やスポンサーに回っている分が有効に使われていないということもあるのではないでしょうか?タダで手に入るチケットだったら別に行かなくたって懐は痛みませんからね。内輪用、顧客用、プレゼント用のチケットの割り当てが多すぎることは問題です。そういう人々は別にサッカーに興味があるわけではないでしょう。イメージを流通させるだけの巨大組織ばかりが便宜を受け、本当に楽しみを享受したい末端の人には届かない。これだけ肥大化すると資本主義の弊害が随所に見られるのはW杯の負の面ではないでしょうか。そのような考えに対しては断固として意義を唱え続けるべきだと思います。

 

P.S.:いよいよ今日は日本戦。こっちも気持ちが高ぶっているのか、5時半に起きてしまいました。俺が緊張してどうするんだ(笑)。今日は夜の試合観戦に備え、これからすぐに出勤することにします。(am7:00)

P.S.:6月9日、FIFAは日本組織委員会(JAWOC)に対して、実際の入場者数のカウントをやめ、販売された入場券による入場者数だけを公表するようにという要請をしました。なぜ、そんなことをしなくてはならないのか?おそらく、入場者の実数と発券枚数とのズレが明らかになると困ることがあるのでしょう。売られているはずのチケットが実は売られていない、あるいは、スポンサーに配られているチケットが入場者数に結びついていない。事実を隠蔽したい、そういう思惑が見え隠れしています。

2002/05/31(金):W杯Preview#4・・・開幕カウントダウン

 ついにやってきましたね。この日が・・・。まさかこの国でこんなに早くワールドカップが開かれるようになろうとは、つい10年ぐらい前までは想像もつかなかったことです。共催じゃなく分催だとか陰口もたたかれる今大会ですが、泣いても笑ってもいよいよ今日が始まりです。

 おそらくいろんなことが起きるでしょう。いいことも悪いことも・・・。一ヶ月の間に何が起きるのかは、ちょっと想像がつきません。チケット問題はまず間違いなく一悶着あるでしょう。この期に及んで今だにチケットが届いていない人がいるなんて信じられないことです。一部は手渡しになるそうですが、大混乱は必至でしょう。フーリガンはほとんどは水際で強制送還させられているようですが、どんなに日本の警察が威信を懸けようとも一部では暴動が起きることも間違いありません。

 でも、少々のもめ事は致し方ないことです。テロだけは勘弁ですが、フーリガンなんていうのは、社会の中の病原菌みたいなものなのです。至るところに消毒液をまき散らせば病原菌はいなくなりますが、それでは善玉の菌まで殺してしまいかねません。外国から見える方のほとんどは善良な方。くれぐれも外人を見たらフーリガンと思えというような村人的発想だけは避けてもらいたいものです。

 4年前はフランスまでノコノコと出かけていきましたが、少々のことは大目に見るおおらかさが実にいい雰囲気を醸し出していました。何しろ、試合の後にシャンゼリゼなどに人々が繰り出して交通を遮断して大騒ぎしていても、警察は見て見ぬ振りなのですから・・・。発煙筒の取り締まりもそんなには厳しくやっていませんでした。試合前の競技場周辺でのチケットの交換も正々堂々と行われていました。トラブルは防げばいいというものではありません。お祭りなのですから、楽しみが奪われるようでは本末転倒だと思います。フランス大会というと日本では「チケット問題のゴタゴタ」と「フーリガンが暴れる映像」ばかりがクローズアップされていたかと思いますが、現実は全然違うのです。わたし的には「シャンゼリゼで大騒ぎする群衆と遠巻きに見てるだけの警官」の構図の方をきちんと報道して欲しかったですね。

 フィールド上の関心事としては、当然、最後にどこの国がワールドカップを掲げているかということと、日本がどこまで勝ち進むかが最大の関心事でしょうが、自分としては「とにかくいい試合が見たい」のと「大会自体が盛り上がって欲しい」それだけです。日本チームはベスト16、できればベスト8まで行って欲しいけど、そこまで行ければむしろ出来すぎでしょう。

 ワールドカップが夢のある大会だったのは1980年代までだったような気がします。90年代の3つの大会は勝利至上主義や守備的な傾向が強まり、内容的にはかんばしくありませんでした。今回も高温多湿の気候や激しすぎるシーズンの弊害が出てつまらない大会になってしまう可能性は大いにあります。でも、逆の可能性もあります。ここ2年くらい、攻撃サッカーの潮流が再び勢いを取り戻しているからです。2年前のEURO2000(ヨーロッパのナショナルチームNo1を決める大会)は熱戦に次ぐ熱戦で異常に盛り上がりましたし、チャンピオンズリーグ(ヨーロッパのクラブチームNo1を決める大会)も攻撃的なチームが常に上位を占めるようになっています。その流れがこの大会でもっともっと顕著になっていって欲しいのです。報道によるとブラジルチームが「クライフのトータルフットボール以来の革命的戦術」を用意しているそうで、ブラジルからは目が離せないかもしれません。

 わたし的には仕事とTV観戦の両立というかつてない難題に取り組まなくてはなりません。取りあえず、始業時間を1時間早めることにしましたが、いつまで続くことやら・・・。とにかく、2度とない体験、精一杯楽しみましょう!!

2002/05/25(土):W杯Preview#3・・・スペースをめぐる攻防

 国立競技場に行って来ました。たった今戻ったところです。日本vsスウェーデン戦。W杯前の最後の試合ということでスタンドは大盛り上がりでしたが、グラウンド上はなんとなくギクシャク。これで、本番、ホントに大丈夫なのでしょうか?

 前半開始の布陣が意図不明。もっと両翼からえぐらないと、真ん中中心の攻めじゃワールドクラスのディフェンスは崩せません。後半、サントス(アレックス)と市川を入れて、サイドをえぐる布陣にしたのはいいけれど、中田英は既に交代。こんどは中央にタメができないので、最後までボールのつながりは悪いままでした。準備万端どころか戦術的意図すらはっきりしないまま、本番に突入です。まさにぶっつけ本番。チュニジアには勝たないとお話になりませんが、これじゃあ、ベルギー、ロシア戦の勝利の見通しは全くたちませんね。どっちに転ぶかは全く予断を許しません。トルシエ監督のいう“4年間の論理的な結果”というのは、“運を天に任せる”ということだったのでしょうか?(笑)。

 サッカーはご存じのようにスペースをめぐる競技。主役はボールですが、ボールを動かすこととスペースを巡る攻防とは常に表裏一体をなしています。もちろん、どのスポーツでもそのような面はありますが、サッカーの場合、スペース確保の重要性は他の競技よりも大きいのです。ボールを足で扱うがゆえに、攻撃側がボールを完全にはホールドできず、常にボールを失う危険にさらされているからです。バスケ、アメフト、ラグビーなどと比べてみればそのことは明白でしょう。

 いかにバランス良く選手を配置し、守備の際はスペースを消し、攻撃の場合はスペースを生み出すか。そこが勝負の分かれ目となるわけです。今日のスウェーデンのディフェンスは実に良く、バランス良くスペースを消していました。どこでボールを奪うかというポイントがはっきりしていて、肝心なところへ来ると、ピタッと寄せてくる。彼らはきちんとツボを押さえているのです。

 攻撃側としては“いかにスペースをうまく使い、またスペースをうまく生み出すか”がポイントとなります。個人レベルで見た場合、スペースの活用方法は選手によって異なります。スペースを見つけるのが得意なタイプ(スペインのラウル、日本の森島etc)、狭い空間でも仕事ができるタイプ、対照的にスペースがないと活きないタイプ(イングランドのオーウェン、日本だとアレックス)、いろいろあるわけです。その中で、最も重要な役割を果たすのがスペースを作り出すタイプの選手。相手をわざと引き寄せてタメを作り、逆に空いた裏のスペースへ決定的なパスを送りこんでしまう。ジダン、中田といったいわゆる司令塔と言われる選手達はそのように空間を自由に生み出すことができるのです。

 チームとしては、個々の選手の特徴をわきまえつつ、どのようにスペースを使い、スペースを生み出していくかという戦術が共有されていなくてはなりません。今日の日本チームの場合、それがイマイチ良くわかりませんでした。結局は個人の力頼み。特に、中田の能力に負っているところが大きいです。オートマティズムとかいって戦術的な意思の統一性を重んじるわりには、トルシエ戦術は、守備はともかく攻撃に関しては無策といわれても仕方がありません。相手のバックラインの裏をねらうのか、サイドをつくのか、あるいは、2、3人で束になって相手の鼻先をかわしながら進むのか。トップに当てて、そこから左右、あるいはいったんはたいてから展開するのか、サイドチェンジを多用し左右に大きくゆさぶるのか。おとりとなって相手を釣り出すランなど、スペースを作り出す動きとしても物足りないものがありました。

 もちろん、現実の試合ではそれらのパターンは適宜組み合わさっていくわけですが、中心となるコンセプトが明確でないのは問題です。全体のバランスを保とうとするばかりに、今ひとつ大胆な動きがなく、結果として相手のバランスを崩すことも出来ていませんでした。いくらボールを支配していても崩しの動きに乏しければ、点は取れません。統一された意志のもと、選手達があ・うんの呼吸で動いて有機的なリズムが生まれるからこそサッカーは面白いのです。逆に、それがない試合は、どうしようもなくつまらないものです。それこそボールが単に漠然と廻っているスポーツにしか過ぎません。

 今日の試合ではダメですね。単にボールが漠然と廻っているだけだもの。5点満点で星2ツ。せめて、本番までには星1ツでも積み上げていってもらいたいものです。

2002/05/22(水):W杯Preview#2・・・キャンプ地誘致と街づくり

 それにしても、カメルーンは一体どうしちゃったんだろう?受け入れ地の中津江村は今か今かと首を長くして待っているそうだが、いまだパリにいて、飛行機の部品を待っている状態なんだそうだ。まあ、彼らだってわざと遅れているわけではないし、お気の毒といえばお気の毒だけど、W杯という重要な大会を前にして、そんなことでつまずくなんて、アフリカらしいといえば、アフリカらしい(*)。

 しかし、もっと気の毒なのは受け入れ地の中津江村。せっかく、誘致したのにキャンプの日程がどんどん短くなって行くのだから、村の人の気持ちを察すると胸が痛む。

 中津江村の場合は極端としても、キャンプを誘致した方と誘致された方の思惑のズレがここへ来て随分出てきているようだ。予定されている行事のキャンセルが相次ぎ、憔悴しきっているところもあるようだ。

 でも、これは最初からある程度予想されていたことなんではないだろうか。W杯のキャンプ地は80の市町村が立候補した。実際に誘致に成功したところは24市町村なんだそうだが、そもそもキャンプの誘致というのになぜそんなにこぞって立候補するというのかがイマイチ附に落ちない。

 外国の有名チームが来ることは名誉なことだし、またとないチャンスであることも間違いない。でも、キャンプは所詮キャンプ。彼らは練習のためにやってくるだけに過ぎない。W杯の準備のために滞在するのであって、決して、国際交流のために滞在するつもりではないはずだ。もちろん、国によっては、適度な交流というのを重視しているチームもある。パラグアイなんてチラベルトがわざわざ先に来て表敬訪問している位だから、それならば、少しは国際交流にもなろうと言うもの。でも、イングランドのように単に純粋な練習の場所としてしかとらえていない国もある。

 問題は誘致の思惑と相手チームの意向をきちんと摺り合わせたのかどうかということ。誘致は税金を使ってやっているのだから、明確なビジョンが必要なのであって、条件が合わなければ、さっさと降りてしまえばいい。それなのに、どこのチームでもとにかく来てくれさえすればいい。挙げた手はもう降ろせない。いろいろやってあげれば、向こうだって交流のために一肌脱いでくれるだろうと思ったって、そんなのはこちらの勝手な思いこみに過ぎない。過度な期待は禁物だ。相手は重要な大会の前でぴりぴりしているのだ。もし、きちんとした約束をしたのに相手がほごにしたのであれば、きちんと抗議をすればいい。何も相手のいうことを何から何までハイハイなんて聞く必要なんてない。そういうことをきちんとやり取りするのが本当の意味での国際交流なんではないのだろうか?

 準備に疲れ果てて「W杯なんてもうごめんだ」なんて思うのではそれこそ本末転倒だと思う。W杯はいかに国によって考え方が異なるかを否応なく体験できる素晴らしい機会なのだ。うまく行かないのも貴重な経験のうち。「アフリカなんて貧乏くじ引いた」そういう考え方だけは是非避けていただきたい。

 そもそも何のためにキャンプの誘致をしたのかということが各自治体でどれくらい明確になっているのだろうか?単に街の名前を売りたいという程度の動機付けでキャンプ地誘致をするのは、基本的に間違っているのではないか。イングランドを誘致した兵庫の津名町などは、多少お金がかかっても「街が有名になればいい」と公言しているらしい。この街はふるさと創生事業の一億円をなんと金塊を買うのに使ったことで有名なんだそうだが、キャンプ地誘致もその程度の売名が目的なんてなんだか悲しくなってしまう。そんな一過性のイベントが街づくりにつながるとは到底思えない。街づくりはもっと長期に渡って地道にやっていくものだろう。キャンプ地誘致が即、街づくりにつながるわけではない。長い目で見た街づくりの考え方があって、そのための起爆剤としてキャンプを捉えるべきなのだ。今はそんな余裕はないだろうけれども、本当に大事なのはW杯後の方であることだけは間違いない。

 

注(*):カメルーンが遅れたのは、なんと報酬をめぐるトラブルなんだそうだ。いやはやなんとまあ・・・。でも、それがアフリカの現実。今朝、パリを経ったそうだけど、着くのは23日の早朝とのこと。なんでそんなに時間かかっちゃうの? ひょっとしたらプロペラ機?(笑)。ホント一刻も早く中津江村に行ってあげてください。

P.S.:カメルーンはようやく、昨夜、特別機で福岡空港に到着した。パリからなんと40時間! 直行便なら12時間だというのに・・・。出発前のドタバタに加え、今度は領空通過の許可の取り忘れ! 珍道中もここまで来るともう笑うしかない。タイの航空関係者が必死になって掛け合って、各国の領空通過の許可を取り付けたそうだ。余計な仕事が出来たと言って怒っていたそうだが、仕方ないよ。カメルーンだもの。こういう“規格外”のチームが参加するのもW杯の楽しさだ。これからも、カメルーンからは絶対に目が離せない!(5/24)

2002/05/19(日):W杯Preview#1・・・サッカーは“わかりにくい”もの?

 いよいよ、待ちに待ったW杯の開幕が近づいて来ました。世界の目がいよいよこれから日本と韓国に集中するわけです。「だらだら日記」もこれからしばらくは、W杯モードに突入します。サッカーファンでない方、むくれないで下さいね。このコーナーにふさわしく、単にスポーツという視点ではなく、文化や社会現象として取り上げていきますので乞うご期待!

 アメリカ、日本などごく一部の国を除いて、サッカーは最も人気のあるスポーツです。普及の度合い、人々への浸透という意味では、サッカーはけた外れの存在です。W杯の推定TV視聴者数は400億人。世界中の全ての人が平均6試合を見る計算です。こんな地球規模のイベントはW杯以外にないことだけは間違いありません。

 外国を旅していていつも思うのは、皆サッカーに対して“熱い”ということです。重要なゲームの最中にレストランなんかに入ったらさあ大変。みんなテレビの前に釘付けだし、ウエイターもちょっと待ったといってなかなか応対してくれないなんてことは良くあること。

 日本では、特に年輩の方は“サッカーは良くわからない”と言います。ゴール以外はただボールが漠然と回っているだけではないか。しかも、ゴールシーンは極端に少ない。だからサッカーはつまらないと考えられているようです。おそらく、サッカーは分節化されていない極めてアナログ的なスポーツであるがゆえにとらえどころがないのでしょう。記録として残される項目がほとんどないこともわかりにくいとされる要因になっているようです。しかし、もしサッカーがそのような“わかりにくい”ものであるならば、こんなに世界中に普及するはずはありません。

 サッカーの本質は記録に現れる部分ではなく、運動体としての美学にあるのだと思います。ボールを使っているという点と勝ち負けをつけるという意味ではスポーツですが、むしろ、集団で行うダンスや音楽に近いものとして捉えた方がいいのかもしれません。一個のポールを両チームの選手が追いかけ、蹴りあう。単にそれだけのものでしかないからこそ、これほどまでに世界の各地に根付き、土着的なものとなっているのです。身体的なるものの素朴な表現が単にボールを使ったスポーツという形に現れているだけに過ぎません。しかも、それは文明の象徴である“手”を使わないとうことによっても増幅されています。アフリカの選手達がパスやドリブルの時に繰り出すステップはまさに彼らのダンスや音楽とシンクロしているのです。近代的なスポーツでありながら、ある部分で目的性よりも土着性の方が優先するのがサッカーの面白さであり、それゆえ多くの人から支持されているのでしょう。ゴールを生むために運動が定義されるわけではなく、むしろ、運動の結果としてゴールがあるのです。

 それは、アメフトのようなアメリカ的なスポーツとは対極をなすものです。アメフトは常に目的的です。得点、そして勝利という究極の目的にかなうように、最適な戦術が構築され、最適な選手がそれに対し抜擢されることで成り立っています。一見正論に見えるそのような思考のあり方は実はアメリカ的なものです。アメフトは“アメリカ的なわかりやすさ”に満ち満ちています。一回の攻撃で何ヤードゲインしたか。どの選手が何ヤードランしたか。パスは何回成功したか。全ては数字に置き換えられ、記録として残されます。アメフトはサッカーやラグビーから派生したものですが、ものごとを計測可能なものにするために、分節化=デジタル化という改良?を加えたものです。サッカーの場合、プレーはほとんどとぎれることはなく、あらゆる事象が連続的に展開します。数字で語られるものと言ったらゴールぐらいしかありません。ボールタッチの回数や走った距離などは記録としてはほとんど意味がないものです。

 アメリカではアメフトこそ近代的な進んだもので、サッカーはプリミティブな遅れたものと考えられているようです。でも、もしそうならば、アメフトがサッカーに対してどんどん置き換わっていっても良さそうです。しかし、事実はむしろ逆になっているようです。世界の多くの人にとっておそらくアメフトほど“わかりにくい”ものはないのです。

 ありとあらゆるアメリカ的なるものがグローバルに広がっていこうとする中で、私は、アメリカイズムの拡大ではないグローバリズムのあり方として、サッカーに注目しています。つまり、共通のものを土台にしながらも、それぞれの風土に合致した新しい土着性を獲得していくひとつのモデルとしてサッカーというスポーツを捉えることができると思うのです。その際のキーワードは“わかりやすさ”でしょう。しかもそれは“頭で考える論理的なわかりやすさ”ではなく、“肌で感じられる感覚的なわかりやすさ”だということです。

 W杯が開かれているからといって無理にサッカーファンになる必要もありません。ただ、世界中で愛されているということは事実です。もしこれを機会に少しでもサッカーをわかりたいと思うなら、頭で考えるのではなく、まず、良く“見る”こと。そして、“感じる”ことでしょうね。

 

 

 

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